カズオ・イシグロの世界
昨日はカズオ・イシグロの原作「日の名残り(原題" Remains of the Day")」の映画を観てました。
私がこの作品、カズオ・イシグロを知ったのは、大学の英語の授業でした。
ある英語学科の先生がいらして、もうベテランで学部長などもしていた方だったのですが、最初の印象が、「物言いがズバッとしている」。
そして、かなーり厳しかったんです。授業は英語の小説、エッセイを訳していくもので、生徒はいつ当たるかわからない。そしてある生徒が宿題を忘れ訳してこないことがあろうものなら「ダメだね、君」と場の空気が氷のようになる。そして評価も下がる。
欠席も三回だとアウトだったような。
最初はなんだこの先生...厳しすぎるし怖い...と思っていたのですが、授業では先生の雑談が面白いし、私が訳をしてきたときも「あぁ、まぁ、、、よくできてる」とあいまいに褒められ、以外にそんな悪い先生じゃないな、と好感を持ちました。
今時の英語耳になる!みたいな教材も先生自身が使ってみてよかったから君たちにも勧める、と恥ずかしげもなく言ったり、自分の経験から、大学生のバイトは家庭教師が最高だという話、(私はこの言葉を信じて家庭教師をしている、そして先生の言ったことは嘘ではなかった)、あとは英語のペーパーバックを月一冊は読むといいとか、(これもやりたい)いろんな雑談があり、毎回楽しかったです。
そんな中、先生がおすすめするという作家がカズオ・イシグロらしいという記憶が、授業を受けてから1年後くらいになぜか思い出して、イギリスの作家だし!ということで「日の名残り」の文庫本を買ったのでした。
- 作者: カズオイシグロ,Kazuo Ishiguro,土屋政雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/05
- メディア: 文庫
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土屋さんの訳が本当に素晴らしいです。なんでこんなに自然に日本人の心にすっと入ってこれるのでしょう。
執事が回想しつつ一人旅をする、なんてことないような話なのですが、その折にふれ、懐かしさや人への尊敬や好意が切なさが情景描写とともに現れてくる。
本当に涙が出るほど味わいがあります。
昨日見た映画はこちらです。
このDVDのジャケットだと、二人はすごく近い関係にあるように見えます。本当はミス・ケントンも執事もお互い気になり、惹かれているのは薄々分かっていたはず、、ということが割と強調されていたような感じでした。
あまりけばけばしく音楽も入っておらず、淡々とした印象を与える映画でしたが、またそこがいい。
次は、「わたしを離さないで」の映画を観てみようと思います。
小説はすでに読んでいましたが、ものすごく引き込まれ、考えさせられる作品でした。
もう一回、まだ読んでない状態になってまっさらな気持ちで読みたい作品です。